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『長工大賞』受賞者

 第5回 平成29年(2017年)『長工大賞』受賞

ノーベル賞受賞の小林・益川理論を実証した
『KEKB加速器開発における高出力パルス発生器の開発』
ノーベル賞受賞の小林・益川理論を実証した 『KEKB加速器開発における高出力パルス発生器の開発』
鈴木久仁於(S37e)
自己写真

『長工大賞』受賞者の功績

 あなたは、母校卒業後、日本高周波株式会社に就職、以来40数年に渡りマイクロ波技術の研究・開発に携わり、2008年(平成20年)ノーベル物理学賞受賞の小林誠、益川敏英氏が提唱した、小林益川理論の実証実験に加わり 世界最先端技術の巨大で超精密なKEKB加速器の電子ビームを光速まで加速する大電カマイクロ波の多種、多様な装置を開発してこの分野でのリーダーとして貢献され、小林益川理論の正しさを検証いたしました。
 このことは、縁の下の力、汗と涙の結晶を成し遂げられた技術者の鏡であります。科学離れが言われる中で新しいことに挑戦する気持ちと諦めない忍耐力は、まさしく長工魂の発揮であり敬意を表するものであります。
 よって、その功績を讃え、ここに『長工大賞』を授与します。

長工 創立120周年記念誌 令和4年(2022年)10月発行より抜粋

『長工大賞』受賞者の紹介

 平成29年に長工大賞を受賞した鈴木久仁於氏を紹介いたします。
 鈴木氏は昭和48年(1973)年に小林・益川理論として提唱された理論を実証するために実施された、実験装置の開発とそれを使っての膨大な実験に裏打ちされたCP対称性の破れを観測し、ノーベル賞受賞に至ったプロジェクトに参加してきました。この件は、立花隆氏著書『小林・益川理論の証明』に詳しく書かれており、その中に、「私は実際、今回のノーベル賞で最も評価されるべきは、小林・益川の二人よりも、その理論の正しさを実証した実験物理屋チームだったとおもっている。」と評価しています。
 その実験は、1994年につくば市にある高エネルギー加速器研究機構(高エネ研:KEK)において、KEKB加速器を用いたBファクトリー計画(B中間子をたくさん作るプロジェクト)が立ち上がりました。 8億電子ボルトの電子と3.5億電子ボルトの陽電子を光の速度で正面衝突させてその軌跡、消滅の時間差をスーパーコンピュータで瞬時に解析して未知の素粒子を探すのです(加速管は全長600メータ、終端部で電子は光速に達し、その後周長3キロメータのリングを周回した後に衝突させる)。このためには高出力のパルスマイクロ波(2856MHz)を加速管に注入するする必要がありますが、クライストロンでは莫大な費用が見込まれました。高出力パルスを得るために空洞共振器(SLEDキャビテー)の採用があるが実用面で問題がありました。そこで開発チームが中心となってその解決方法を考案し(*特許)、80MWパルス波から380MWのパルス波を得る実用化に成功したのです。鈴木氏がKEKB加速器の中心技術である高出力パルス発生器の開発にチームの一員として実績を上げたことを長岡工業高等学校の同窓生、同級生として誇りに思います。
 *特許
大電力高周波パルス圧縮装置用の空洞共振器(SLEDキャビテー)
特許: 特開平5-251911 登録番号2022987

 鈴木氏はこう語っています。
 私は電子工学課を卒業してマイクロ波技術を専門としていた会社に勤務しました。会社トップの方針として、人のやらない困難の仕事にこそ価値がある、人まねはするな、易きに流されるな、と常々教育されました。
 1980年ころ(38年前)から通い始めた高エネ研では学者、研究者の要求レベルは非常に高く、無理難題を言われいろいろな失敗もしましたが、逃げない、諦めない、ごまかさない、相手に正直に報告することを仕事のモットーとして開発設計に邁進してきました。
 何しろ世の中に無い物を作ろうとする訳ですから産みの苦しみが伴うのは当然と覚悟を決めてかかりました。打ち合わせ、設計、製造、検査の工程の中に1つでもミスがあると全部駄目になります。私は部署の垣根を越えて厳しくチックをし、けんかもして大分恨まれた。しかし、事の重要性を繰り返し説明して解ってもらえるように努力をしました。このため、夜も良く眠れずにうなされたことも多々ありました。
 何か問題が発生すると直ぐにKEKに飛んで行き、担当先生に報告、相談し、対策に当たりました。相手も難しさが解っているのできついことは言わず相談に乗ってくれました。黙ってそのまま進めてごまかそうとしても何処かでバレル。これをやっては絶対にいけないと心に決め、仕事を推進してきました。 普段は優しいが、仕事の心構えとして遅刻、整理、整頓には厳しく当たり、だらしがない中では絶対に良い物は出来ないというのが私の信念です。 振り返ってみて、ノーベル賞理論の実証に寄与したKEKB加速器に、私の開発した技術が多少でも貢献できたことを誇りに思っています。これはひとえに母校に初めて創られた電子工学課で学んできたことが基礎となっています。

受賞者のプロフィール

 鈴木久仁於氏 昭和37年 電子工学課(当時の課名)第1期卒業 卒業後、日本高周波(株)に就職し、以来マイクロ波技術製品の開発に携わる。

長工大賞 賞状

 賞状をクリックすると拡大します。戻るときはweb画面上部の左矢印「←」をクリックしてください。
長工大賞の賞状

 本件詳細は東京支部だより14号(平成28年)の『会員からの特別寄稿』に掲載されています。
 ここをクリックし、是非ご覧になってください。

文責 小島 洋(S37e)