先輩から
第73弾です。なお今後も定期的に投稿を掲載して行きます。どうぞご期待ください。
第73弾「俳句随想」
松永 巌
私は平成二二年(二〇一〇)ホトトギスの誌友となって以来俳句に関して疑問が生じた時には、良く芦屋の汀子先生の御自宅へ、返信用の葉書を同封して質問状をお送りして居た。先生は何時も数日以内に自筆で簡明な回答を下さって居た。
平成二七年(二〇一五)八月一六日、名詞の季題を動詞として使用されて居る例を幾つか挙げて「薬喰」を「薬喰ふ」と動詞として使用出来ないものかと先生にお聞きするため手紙を書いて出した。
何時も数日以内にご返事を頂いたものが、その時は一週間過ぎてもご返事が無かった。恐らくお忙しくてお出来にならぬのであろうと半ば諦めて居た。所が八月二七日先生自筆のお名前で部厚い、稍大き目の封書が届いた。急いで封を切って見て驚いた。返信用に同封してお送りした葉書に
「俳句随想に使わせて頂きました。お許し下さいませ。同封致しますので御覧下さいませ。 朔風様 汀子」と認められて居た。そして「俳句随想」に掲載予定の文章が綺麗にワープロで打たれた原稿が同封されて居た。
「S氏からお手紙を頂いた」との切り出しであったが、このSが「朔風」である事は申す迄も無いが、その後のS氏の紹介のお言葉に身に余るものがあり、失礼乍らご訂正をお願いする 手紙を出した。そのご返事は
「お手紙恐縮し拝読(教養ある紳士)としました」とあった。
この「俳句随想」は平成二七年一一月号に載せて頂いて居る。私の手紙の一部とは言え汀子先生の御手を患わせ伝統ある「ホトトギス」の「俳句随想」に載せて頂いた事は、今考えても身振いする程感激して居る次第である。
尚この「俳句随想」は汀子先生の不朽の名著「俳句を愛するならば」にも転載されて居る。最後に「真摯な御質問に対してのお答えになったかどうか分からないが、お返事とさせて頂きたい。」と結ばれて居て小生へのご配慮を頂き感激に咽ぶものである。
この「俳句を愛するならば」が出版された時に直ちに購入、御揮毫を頂く事をお願いし快くお受け下さったので芦屋にお送りした。
御揮毫は
明るさは海よりのもの野水仙 汀子
松永朔風様
としてある。貴重な一冊として我が家の家宝として居る。
2024.3.13