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先輩から

S20M 松永大先輩からの投稿です。
第64弾です。なお今後も定期的に投稿を掲載して行きます。どうぞご期待ください。
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第64弾「カテーテル治療」

松永 巌

 毎年、年末に近くのH病院で健康診断を受けて異常は認められなかったのだが、今回は「長く歩くと息が切れる」と申し出たところ、担当の循環器内科のS医師は詳細にチェックすると言って、二泊三日の検査入院をした。
 その結果、心臓の内にある大動脈弁狭窄症と心臓に栄養を与える三本の冠動脈閉塞症で手術が必要であると言うので妻と二人でS医師の説明を聞いた。方法は二つあって一つは胸部切開してやる方法で施術は容易だが患者の負担が大きく、私の年齢から無理であると言う。もう一つが鼠経(股の付根)か手首から動脈にパイプを通し、カテーテルと言う風船状のものを入れステント(ステンレスの金網で出来た筒)を閉塞部に挿入する方法だと言う。
 大動脈弁の方は当院では出来ず、鶴見のT病院でやる事になるが、冠動脈の方は二泊三日の入院で一本ずつ出来るので、即時実行を奨めると言う事であった。早く楽になった方が良いと、第一本目を三月六日に入院、七日に実施、二つのステントを挿入、予定通り三日目の朝退院。何の変化も無く普通に生活して居た。
 調子が良い中にと二回目を四月二〇日入院と予約して予定通り二日目の二一日昼過ぎから手術が始まった。前回と同じ左手に部分麻酔の注射で始まった。私の角度からもモニターが斜ではあるが見えて居るので、何が行われて居るかは想像出来た。「小刻みに息をして下さい」とS医師が言ったあと、モニター画面の一点から“蛸が墨を吐いた様な煙幕が拡がった。私は直ぐ“血管が破れた”と直感し大きな声を出した後気を失って以後の記憶が全く無くなった。
 どれ位の時間が経過したか解らないが、気が付いたら大きな治療室(多分集中治療室)のベッドに寝かされて居て、両手、両足がベッドに固定されて居た。小水の対策はしてあったが身動きが出来ない。部屋も静かで人気が無い。「おーい!!」と大きな声を出したら男の看護師が来て説明をして呉れた。回復後のS医師との説明を綜合すると、治療中に高度石灰化した所で穿孔、つまり孔が出来た。大至急ステントにカバーを掛けたものを挿入し止血が出来、大事に至らなかったが、暫くは絶対安静が必要であったのだと言う。気が付いたのが午前二時頃、八時頃普通病棟に移るまでが最も辛かった。
 血管が破れた時、血圧が急降下して失神した事も解かった。手術前に交わされた誓約書には穿孔事故が発生し、死に至る事もあると記してある。
 私は事故として仕方ないが、S医師が落ち着いて対処し重大事故に到らなかった事に感謝して居る。
 血管事故が納まり、H病院から鶴見のT病院に転院し三本目の手術を済ませ五月八日に無事退院、大動脈弁の方は暫らく様子を見る事にした。

2023.5.19