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第31回記念 工芸美術「日工会展」若長会鑑賞報告記

第31回記念 工芸美術「日工会展」
若長会鑑賞報告記

1.会 期:
2022年(令和4年)6月15日(水)~21日(火)
2.会 場:
東京都美術館 ロビー階 第4展示室
3.鑑賞会:
2022年(令和4年)6月17日(金)11:00~12:00
4.参加者:
長工G:11名(敬称略)
樋口、土田、大橋、片桐、山川、川村、加藤、金井、永井、野﨑、田中(樋口氏のお嬢様)
若波会:12名

『参加記』

 工芸美術「日工会展」は作家の自由志向を尊重し、個性ある創作活動を通して、時代に即応した質の高い豊かな工芸を創造し、わが国の工芸美術の発展と文化の振興に寄与することを目的としている。日工会展は今回で第31回目を迎えた。
 鑑賞会では、長工同窓会東京支部長:金井氏のご子息である陶芸家 金井伸弥氏(昨年の個展以来の再会)のご尽力で大変有意義な鑑賞会となった。ちなみに金井伸弥氏は本会の評議員でもあり、過去においては日工会展での内閣総理大臣賞や日展における(日本美術展覧会)特選受賞等をされた経歴を持つ。

上野駅公園改札口前での参加者一同

 この日工会展では様々な工芸美術における技法と素材による作品が創作出展されていた。(下記文面は日工会展ホームページを参考にさせて頂いた)
金工
金属工芸は鋳金、鍛金、彫金の三つに大別することが出来る。
鋳金は金属(銅、金、銀、アルミ、鉄、他)を鋳型に流し込み冷却凝固から取り出し仕上げまで行うことをいう。技法は砂型、蠟型、込型、惣型等の鋳造法がある。
鍛金は打物ともいう金属の展延性、収縮性を利用し金槌で打ち、溶接、リベット等で形を作る技法。
彫金はおもに加飾に用いられる技法で大小各種の鏨で金属面に模様を彫ったり、埋め込んだり、透かしたり、他の金属をはめ込んだりして形成する。
日工会奨励賞
作品名
静聴
作者
椛澤 伸治
種類(寸法)
鍛(6.0×38.0×37.0cm)
漆芸
ウルシの木は日本を含む東アジアの山野に育つ広葉樹であり、漆はそのウルシの木から採集された樹液を精製した自然塗料である。この漆を木や近年では合板にも何回も塗り重ねて堅牢な塗膜を作り上塗りをして加飾する。他に粘土等で原型を作り漆を固めて素地とする乾漆もあり、自由な造型が得られるので近年作品制作に多用されている。
加飾には金粉を蒔いて漆で固め研ぎあげる蒔絵(まきえ)、さまざまな貝の殻を板状にして貼る螺鈿(らでん)、漆の塗面を浅く彫り金消粉を入れる沈金(ちんきん)、色を入れる蒟醬(キンマ)、漆を十数回、時には百回以上も塗り重ねて文様を彫る彫漆(ちょうしつ)等それぞれ特徴のある技法がある。近年一部であるが、化学樹脂も成型や加飾に用いられている。この分野での内閣総理大臣賞受賞作品を示す。
内閣総理大臣賞
作品名
祥惶
作者
志観寺 範從
役職
常務理事
種類(寸法)
漆芸(117.0×91.0cm)
陶磁器
焼き物の成り立つ要素は、生地、成型、装飾、釉薬、焼成である。 生地は陶器には自然に堆積した粘土を、磁器には陶石と呼ばれる風化した花崗岩を微粉砕し粘土状にした磁器土が用いられロクロ、手びねり、型、板作り、鋳込みなどの方法を用いて成型する。
装飾法には絵の具、顔料、化粧土などを用いた絵付けや、生地表面に凹凸を施す彫り、叩き、櫛目、レリーフ、象嵌など多くの手法がある。 焼成は電気、ガス、薪等を熱源とし、燃焼時の酸素供給量の調整により生地、釉薬の発色に変化をあたえる。
これら個々の工程の多様な選択肢に様々な創意工夫を加え作品作りを行っている。
この分野での文部科学大臣賞受賞作品と金井伸弥氏の作品を示す。なお、人脈の広い川村氏は今回の文部科学大臣賞を受賞された小林(理事・審査員)作陶家ご本人から受賞作の説明を受けられた事を筆者は後で知った。
文部科学大臣賞
作品名
昇光
作者
小林 英夫
役職
理事・審査員
種類(寸法)
陶器(60.0×34.0×22.0ccm)

作家本人から説明を熱心に聞く参加者

金井伸弥氏の作品「希望・その先の未来」

染色・織・刺繍
現代の染織工芸の表現技法は新しい色料、素材も加わり多岐にわたっている。蠟で防染を行う蠟染め、糊で防染を行う糊染め、布や繊維を絞る絞染め、板を使った板締絞りなどがある。織物は経糸、緯糸が交わり、綴織り、絣織り、組織りなどに加え、編む、絡める以外の技法も使われ多種多様である。刺繍はミシン刺繍も含め、平糸、撚糸を多種な技法を使い自由に針で縫って形を表現する。それに加工技法による布象嵌、抜染、フエルトなどがある。これらの技法を作者の創意と感性により、その特性を生かし独自の表現がなされている。
日工会会員賞
作品名
山峡盛夏
作者
広沢 麗子
役職
会員・審査員
種類(寸法)
織(90.0×80.0×20.0cm)
皮革
耐久性・柔軟性・弾力性に富み、立体造形などにも適している。主に用いられる革は牛・豚・羊・山羊・馬・魚などのなめし革と生革(きがわ)が使用される。
技法としては打つ・彫るなどのレリーフ状にする浮き出し方と、切る・よる・貼る・編む・象嵌などが主にあげられる。
染色としては染料・顔料・漆に加えて防染しながらの自然焼きなどがあげられる。
日工会奨励賞
作品名
煌めく
作者
川口 広美
種類(寸法)
革(116.7×91.0cm)
硝子
硝子は、砂とソーダ灰を主な原料として1300℃前後の熱で溶かして成形する。
やわらかい間にパイプに巻き取り吹いて成形する吹ガラス、型に流し入れて成形するパート・ド・ヴェール、またいったん成形されたガラスを再加熱し手を加えるザギンブ等の技法がある。さらに成形された硝子に加飾をほどこすカット、グラヴィール、サンドブラスト、エナメル絵付けといった技法もある。
華麗なる硝子の世界は、幅の広い様々な技法により展開される。
日工会賞
作品名
未生
作者
大場 千恵
種類(寸法)
硝(44.0×45.0×18.0cm)
七宝
七宝は、金属の素地にガラス質の釉薬を焼成溶着させる加飾の芸術である。
炉で焼成するため、永劫性があり、芸術表現の手段として、デザイン、色彩、仕上げの美が問われる。大形作品は炉の大きさ等に制約され、デザイン線をおかさないよう切断、焼成し、象嵌貼り付けする。
七宝のマチエールに適合した異素材と組み合わせることもある。
日工会奨励賞
作品名
積陽
作者
梅本 聖夫
種類(寸法)
七(155.5×107.0cm)
人形
人形は、具象的あるいは抽象的な表現で人形(ひとがた)を使って造形される。
素材は多岐にわたり、土・木・紙・布などがあり、今日では新素材も自由に用いられている。
彩色は技法・材料とも古来の方法で、顔料・染料・漆などを使う他、新しく開発された技法・材料も幅広く活用されている。
木工
木工は数十年数百年経過した木を使う。特に欅・桜・桑・楠・タモ、また埋もれ木等堅木を使い、木目の美しさ、木肌の色調などそれぞれの木の特色を生かして制作する。着色は生漆・白蠟・化学塗料等を使用し、木の良さを失わないように塗る。技法としては指物・立体彫・浮彫・透彫、また他の種類の木を埋め込む象嵌、色々の木を張り合わせる方法もある。多くは立体彫や浮彫が主体になっている。
和紙
和紙の原料は、楮、三椏、雁皮が主に使用され、製法は「溜漉き」と「流し漉き」の二種類がある。本展出品の和紙工芸は楮などの原料繊維をあらかじめ着色し、伝統ある紙漉きの技法を生かし、具象あるいは抽象的模様を構成し、和紙特有の質感を生かした作品作りをしている。
その他
竹、籐など自然の趣を生かした素材、アクリル等の合成樹脂など、現代性を表現し得る素材。多くの技法で造形美、芸術性を追求する幅広い制作がみられる。

 筆者にとって初めての日工会展を覗き見たが、美の世界を久々に堪能させて頂いた。
 陶芸家:金井伸弥氏とのツーショット、染の作品前で和服姿の筆者を加藤氏に撮って頂いた。

 この後、東京新潟県人会館において若長会懇親会(米寿のお祝い含む)に臨んだことを記して筆を置く。

東京新潟県人会館到着時の健脚揃いの面々

写真 : 加藤(S40C)
編集 : 野﨑(S46e)


付録:出展作品の中で筆者の主観で印象に残った作品のいくつかを示す。