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《人生の回想》

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第13話 中国・北京オリンピックとITSそしてESTによる横浜環境政策の展望
野﨑(旧姓:椿)敬策(S46e)
EST:Environmentally Sustainable Transport(環境的に持続可能な交通)
 筆者は2003年早期退職後、いくつかの会社に関わった。
・㈱ジャパンビフォアサービス 技術顧問
・三宝システム㈱ 常務執行役員
・㈱リオス 東京副支社長 (岡山 両備ホールディングス㈱グループ)
 いずれも小さな企業だったがITS関連のビジネス拡大を狙った。しかし、残念ながら成果を上げる事が出来なかった。唯一、リオスではバス運行管理や駐車場管理システムを事業化し、Panasonicがこれらの事業から撤退した事も有りその事業継続を持ち込み、多少の受注を達成した。両備では路面電車や中部国際空港への船舶輸送事業も手掛け可能性を秘めていたが、全国レベルでの事業拡大の筆者の提言は受け容れられなかった。2009年で企業との関わりは自然消滅した。
 中国では2008年の北京オリンピックに向け急ピッチなインフラ構築が進んでいた。交通関連では北京市を中心にITS活用による効率的な移動や情報提供による渋滞緩和対策が日本の支援で行われた。ITS Japanと各メーカーは中国へのITS関連ビジネス展開を目指し、手弁当で協力した。北京や上海などの近代化が進んだ地域には多くの日本人が行っていた。
 筆者は2006年2月にチョット別の観点から内陸部の地方都市がこのOlympicや都市開発に伴う道路インフラ開発に向けどの様な状況かを視察に出かけた。2月17日成田を出発した。予定は22日までの6日間のスケジュールを組んだ。行先は内陸部の杭州を選んだ。 杭州は上海の南西部約200Kmに位置し長江(揚子江)の河口の南に広がる浙江省の首都である。南宋時代には人口120万人を超した世界最大の都市で陸上交通、大運河・河川(長江下流域)の水上交通で対外貿易港の商業都市として発展してきた。この様な背景でITS活用に対する視察地として選択した。国宝六和塔や西湖、さらには黄山等の観光スポットで有名である。
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成田空港出発check in

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杭州蕭山国際空港にて

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広大な長江と銭塘江大橋

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国宝六和塔と街並み

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国宝六和塔

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西湖の風景

 ホテルチェックイン後、翌日は郊外の宏村に向かった。前夜からの雪で途中道路では渋滞にはまった。内陸部の都市では車も少なく日本の昭和40年代前期の印象だった。
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宿泊したホテル

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雪の降った杭州市内の道路

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高速入り口で公安check

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郊外の道路風景

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雪で渋滞

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渋滞中で一息つく筆者

 車は観光客のバスや自家用車が殆どだった。宏村は黄山に向かう途中の村落で時代がタイムスリップした光景だった。11世紀の北宋時代の歴史的建造物が多く残る村落で2,000年に世界遺産登録された。村内は静まり返っているがお土産を売る村人たちが出迎えた。建物は清朝時代中期のものでおよそ140棟が現存していた。宏村を出て二日目の宿泊地、黄山を目指した。
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黄山市宏村の風景

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集落に入る観光客

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お土産を売る村人

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村内にある月沼

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骨董が並ぶ(本物かは定かでない)

 世界遺産:黄山にロープウェイで昇り、断崖絶壁の山並みを延々と続く石段を歩きホテルに向かった。この光景は切立った岩山に松が林立し、墨絵の世界だった。標高は光明頂で1,860mと思ったより高くは無かった。至る所に建物が点在し万里の長城で象徴するような壮大な地だった。
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黄山ロープウェイ乗り場

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ロープウェイからの風景

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ロープウェイを降りて

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雪山の黄山

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石段を歩いて

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断崖絶壁の山々と松の林立

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墨絵の世界

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延々と続く石段

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最高峰:光明頂からの眼下

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光明頂:1,860mにて

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怪石の飛来石

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黄山の宿泊ホテル

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黄山のホテルにて

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早朝5時に起きてご来光を撮る

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中央には怪石と呼ばれる飛来石

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水墨画の様な幻想的世界

 黄山を下り頓渓・古村に向かった。出来たばかりの高速道路で眼を疑う光景に出くわした。道路を人が歩いている。ツアーガイド曰く、高速道路外は道が悪く所々から高速内に進入路が作られ(住民がフィンスを破って)歩いているとの事。また、一般道は昭和の世界だった。さらには高速道路建設で足場が竹組だった。これには驚かされた。中国ならではの人海戦術による急ピッチな建設の一コマを目撃した時だった。
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高速道路料金所

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開通間もない高速道路(車の姿無し)

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高速道路を歩く人々(驚きの光景)

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昭和の一風景のよう

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竹組の足場の高速道路建設現場

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竹組足場が続く

 黄山の後、頓渓から古村を目指した。古い街並みの続く中国は近代化とのギャップが想像以上にあった。ITS活用による中国へのビジネス提案は筆者にとって遠い世界と感じた。
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頓渓の街並みとお土産屋さん

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古村の街中:毛筆画の数々(お土産屋さん)

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杭州に戻る村の風景

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杭州のお寺

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羅漢像

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お土産を作る風景

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お土産屋さん

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夜の杭州:Chinese雑技団ショー

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ホテルからの杭州市内

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お土産物の数々

 杭州の最後の夜は中国雑技団のショーを楽しんだ。お土産屋さんには骨董等が沢山売られていたが、本物かどうか疑わしいモノが多々あった。今回の視察で中国へのITSビジネスは時期尚早と判断した。また、Repeaterとしての考えが薄れた。大通りから一歩裏に入ると近代化とはかけ離れた世界が広がっていた。トイレ事情は田舎に行くと記すのを躊躇する光景だった。現在、16年が経過し状況も大幅に改善され発展したと思われるが、中国四千年の歴史と経済発展の融合が望まれる。
 なお、北京オリンピックにたいしては日本の支援で中国版VICSが実用化された。また、公共交通への対応も北京-上海の新幹線導入など新たなページを開いたと言える。

 横浜市への政策提言活動は2005年の長期ビジョン研究会と2009年の地球温暖化対策としての環境創造審議会が発足しそこへの政策提言(横浜市温暖化部会)だった。いずれも横浜ITS研究フォーラムとして参画した。
 長期ビジョン研究会では横浜市都市整備長期ビジョンと連携し
   ⇒都市計画・防災計画・環境計画・地域活性化・少子高齢化・観光都市計画
 「人」「クルマ」「公共交通(鉄道・バス・タクシー)」「海上交通(船)」「物流」に対し
   ⇒21世紀型総合交通システムの構築
を目指し 「Y-ITS21:横浜市総合交通長期ビジョン」を策定した。
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 長期ビジョンではAustria Viennaの交通モーダルシフト施策を例にとり、公共交通の発展形として「路面電車:LRT」の復活導入や河川や海上(羽田-MM21間)の交通網整備などを提言した。国際観光都市としてシンガポールを例にとり、横浜東口からMM21、山下公園マリンタワー経由で港の見える丘公園までのロープウェイ:港横浜空中散歩を提言した。現在ではこれらの政策がいくつか実現しているが、ロープウェイは東京オリンピックに合わせ2021年4月 約630mの「YOKOHAMA AIR CABIN」(遊園地レベルで筆者らの提言には沿わない小規模な設備)が実現した。
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 環境対策では「横浜市環境創造審議会」で以下のpressリリースを行った。
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日本経済新聞
2008年11月5日(水)
CO2削減へ動き広がる 横浜市も車流入規制へ 課金など検討
 横浜市は二酸化炭素(CO2)の排出削減に向け、市中心部への乗用車の乗り入れ規制導入に向けた検討を始める。市の審議会が来年度にも具体策をまとめるのを受け、実証実験に乗り出す。横浜駅周辺や関内地区周辺などが規制対象になる見込み。都市中心部への乗用車の乗り入れ規制では名古屋市で10月から実験が始まっている。横浜市は乗り入れ規制を脱温暖化の有効手段とみており、他の大都市にも同様の動きが広がりそうだ。

 地球温暖化対策を検討する市の諮問機関、横浜市環境創造審議会が、市中心部への乗り入れ規制を盛り込んだ中間報告をまとめた。審議会は今後、具体的な規制方法や対象範囲などを引き続き議論し、最終報告をまとめる。(07:00)
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 筆者の「横浜ITS研究フォーラム」では、2009年にPresentationを温暖化対策検討部会で行った。

横浜市環境創造審議会 第14回地球温暖化対策検討部会(H21.2.18)
意見表明人
○〈温室効果ガス排出の少ない交通利用を広めるための制度はどうあるべきか?〉
・NPO法人 エコ住宅リサイクルバンク
二藤  忠 氏
・環境自治体会議 環境政策研究所 主任研究員
上岡 直見 氏
・横浜ITS研究フォーラム(代表)
ISO/TC204 WG5(自動料金収受)委員
野﨑 敬策 氏
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 車の乗り入れ規制などと併せてロードプライシングはZEROカーボンを目指し、東京都で一早く検討(石原都知事時代)を行った。しかし、議会の承認が得られず検討倒れに終わった。ロンドンでは2012年のOlympicに合わせ市内のロードプライシングを実施した。シンガポールでも車のナンバー(奇数/偶数)で市内への流入規制を実施した。横浜においてはMM21地区を中心にロードプライシングの提言をしたが、中田市長から林市長に代わりこれらの施策がトーンダウンし実現には至らなかった。

 2006年に東京理科大学大学院:伊丹教授より特別講師の依頼があった。理科大の野田キャンパス、葛飾キャンパスそして長万部キャンパス(北海道)で講義を行った。

 第14話では理科大での講義や2011年3月11日の東日本大震災等について回想する。