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《人生の回想》

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第9話 ITSによる社会変革と若手人材の育成を担う
野﨑(旧姓:椿)敬策(S46e)
ITS:Intelligent Transport Systems(高度交通システム)
ITS:Intelligent Transport Systems
  (高度交通システム)
 母校:長工での創立100周年事業「100人リレートーク」に2002年3月、推薦者のクラスメート:山崎君と校門をくぐった。懐かしさが込上げてきた瞬間であった。職員室に通されるとかつての恩師:平山教頭先生が出迎えてくれた。クラス会では何度かご一緒させて頂いたが、この様な形での再会は意義深いものであった。全校生徒の前で筆者含め7人(壇上)の紹介が有った。その後、懐かしい電子科の教室に案内された。3学年の後輩達が狭い教室で待っていた。PCとプロジェクターによるプレゼンテーションを一時間ほど行った。
 テーマは「ロマン&チャレンジ スピリット」で自己紹介から始まり、松下電器でのシステム事業開発等について具体例を交えて話した。最後に送った言葉は以下のとおりである。
∫ V・S・O・P で楽しもう !
 20代:Venturous(冒険)
  30代:Specialist(専門家)
   40代:Originality(独創性)
     & Personality(個性・人格)
自立と寛容の心
• 自立
 たくましく、しなやかな個々人が根付かない社会はもろい。自立した個人の、その一人一人の才能とやる気と決断と倫理観と美意識と知恵が、会社の骨格と品格をつくる。未来を形作る。自立の精神があって、個人は潜在力を外に押し出すことができる。
• 寛容
 それぞれの個々人の特質と才能の違いを認め、それを伸ばし、会社全体としての適材適所をもっとよく実現する寛容の気持ちと包容力を会社は持たなければならない。そうでない会社は干からびる。寛容の精神があって、会社は潜在力を中から引き出すことができる。
仕事と社会生活の融合 自然と戯れる
 ⇒ 筆者はアウトドア サイクリング 写真 ピアノ 等を趣味とする
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 後輩たちは誰一人眠ることなく眼を輝かせ聴いてくれた。さまざまな質問が出され、それに受け答えしリレートークは終了した。 学会等で話す場面とは違い、筆者にとっても貴重な体験をさせて頂いた。
 退職前に過ごした会社生活をチョットだけ振り返る。
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 ETC特別プロジェクト室長時代のSecretaryの一人で可愛い彼女。テープカットの写真では中央に立ち専務にハサミを渡す大役をやってくれた。
 システム事業推進センター時の富士スピードウェイでは初めてレースクィーンと話した。
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レースクィーンとのShot

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富士スピードウェイMaine Standの提案鳥観図

 松下最後の社員旅行では家族連れで甲州の葡萄狩りを楽しんだ。松下通信全社から集まったシステム事業推進センターの面々である。
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前列右端が筆者 中央が最後の上司(センター長)

 2003年4月に第二の人生のスタートをきった。「交通ジャーナリスト・ITSプロデューサー」としての活動開始である。
 ITSは国境を越えた地球レベルで展望され、衛星・放送・道路通信インフラなどすべてに密接なかかわりを持ちながら実現されるトータルテクノロジーで社会や暮らしを豊かに快適にする。筆者はこのITSを生涯のテーマとしてきた。
・ナビゲーションシステムの高度化 ・自動料金収受システム ・安全運転の支援
・交通管理の最適化 ・道路管理の効率化 ・公共交通の支援 ・商用車の効率化
・歩行者等の支援 ・緊急車両の運行支援
 上記は国家プロジェクトとしての九つのテーマであり、筆者は会社生活を通じて全てに関わってきた。早期退職後も次のような立場で活動に関わった。
・ISO TC204/WG5(自動料金収受)国内委員
・ITS情報通信システム推進会議アドバイザー(総務省)
・電子情報通信学会 情報処理学会 ITS専門研究委員会委員
・電気学会 ITS技術による自動車交通の環境負荷低減に関する調査専門委員会委員
      自動運転システム調査専門委員会委員
・政策の創造と協同のための横浜会議会員(中田市長時代)
・横浜ITS研究フォーラム代表
・横浜市長期ビジョン研究会委員
・横浜の公共交通活性化をめざす会運営委員
・横浜市 地球温暖化検討部会
・(NPO)ITS Japan 個人会員
 学会活動は国際会議などを除き会員の会費でまかなっている。従って、年6回ほど開催する研究会(MasterやDoctorクラスの学生の論文発表の場)は安い会場探しから始まる。大学には沢山の講義室や会議室が在るのに意外に使用が難しい。会員各社にも依頼が有り、筆者は松下の保養所を一泊二日の研究会では提供した。那須では初代IEICE(電子情報通信学会)のITS研究会委員長(横浜国大:河野教授)の要請で開催した。茅ヶ崎では二代目委員長(慶応大:中川教授)から依頼された。他社では三菱さんが協力的で丸の内で何度か開催した。IPSJ(情報処理学会)では比較的大学の会議室が提供された。
 論文発表の後、質疑応答となる。質問の答えに悪戦苦闘する学生に対し時々、指導教授(論文が共著の場合)が助け舟を出す。筆者は出来る限り学生本人に最後までやり遂げる事を望んだ。また、今後の研究活動に対し前向きで発展性のあるcommentをするよう心掛けた。実ビジネスでの経験談などは学生に喜ばれた。 また、この場で招待講演が年に数回企画され筆者も何度となく講演をさせて頂いた。
 国内のITSはITS Japanが主導権を握り推進していた。全国各地に自治体主体のITS推進協議会が発足し、国の予算支援を受け実証実験などを行った。筆者の地元:横浜市にも働きかけたが反応が無かった。仕方なく自ら「横浜ITS研究フォーラム」をIEICEの協力で立ち上げた。代表者は学識経験者を考えていたが、筆者に代表をとの声に応じた。顧問に慶応大学の川島教授(ISO TC204日本代表)と横浜国大の河野教授にお願いした。メンバーには関東学院大のITS研究者やYRP(横須賀リサーチパーク)の研究者も加わった。
 このフォーラムでは「国際観光都市:横浜」に相応しいITS活用を目指したテーマを研究した。その一つを紹介する。
 2005年7月横浜市への政策提言で環境問題を取り上げ、CO2削減に寄与する自動車走行支援システムを提言した。以下はPresentationの一部である。
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 交通社会における課題状況を以下に示す。
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 1997年12月に気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書が採択された。これらを背景に横浜市への提言を実施した。
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 このテーマを実現するためには多くの関係省庁や学民の協力が必要となる。

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 システムの基本構成および交差点無停止走行支援のシステムアルゴリズムは次のとおりである。
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 当時、2006年に世界自動車会議が横浜で開催予定しておりこのOpeningに合わせた開発を模索した。
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京都議定書目標達成計画 (閣議決定)への貢献
2010年度 自動車運輸部門CO2排出量目標値 2億5千万トン
(日本全体削減目標の約21.5%をしめる)→ 交通対策・燃費改善等で削減する必要がある排出量 5490万トン
■ 本システムの導入(交通流の円滑化 + 燃費改善の効果)により→全国で約5~10%削減効果により約275万~550万トンの削減
 排出権取引金額に換算すると
 約2750万~5500万米ドル(約30億~60億円)相当の効果
 ※炭酸ガス1トンあたり、10米ドルの排出権取引額とした場合( 1米ドル 約110円)
 海外の技術調査では1980年代いくつかの研究事例が有り、本提言内容は現実性ある内容だった。ただ、当時の状況では路車間通信技術の困難さから実用化は見送られた。
[海外研究事例](’80年代後期)
・スウェーデン「Green Wave System」
・オーストラリア(メルボルン市)「速度アドバイス実験」
・ドイツ(ウェルスブルク市) 「速度アドバイス実験」
[国内調査事例](平成5~6年)
「燃料消費効率化改善に関する調査報告書(自動車の省エネルギー走行技術)」((財)省エネルギーセンター、調査受託(財)自動車走行電子技術協会)
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Green Wave Systemのイメージ

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旅行速度と燃料消費効率との関係

 本提言は横浜市も賛同したが、テーマが大きすぎ神奈川県警へ相談せよとのサゼッションだった。神奈川県警からは警察庁へ提言するよう指示され、外郭団体の交通管理技術協会に出向いたが結果、環境省が望ましいとの事だった。環境省からは内閣府にと言われ、内閣府の担当部署まで説明に行った。たらい回しされた結果、現時点で信号機の現示や秒時データ等を他システムへの送出は出来ない理由で本システムは実現しなかった。しかし、2019年にETC2.0を活用した信号交差点支援機能がカーナビと連携し、交差点の赤・青秒時提供が実現した。筆者らの提言内容を当時採用していれば画期的だったのにと悔しさが残った。
 2004年7月に第二の人生で初めての国際会議に臨んだ。ITST2004がシンガポールで開催された。ITST(International Workshop on ITS Telecommunications)は情報通信国際ワークショップと呼ばれ、独立行政法人情報通信研究機構 (NICT)の主催で実施し、ITSの情報通信技術に特化した国際ワークショップである。ちなみにNICTは今では一般化しているICT(Information Communication Technology:情報通信技術)の名付者である。東京理科大学大学院の伊丹研究室メンバーと同行した。帰国後、学会にてITST2004の会議報告を伊丹教授と共著で行った。
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東京理科大:伊丹教授と会場にて

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シンガポールのERP(ロードプライシング)

シンガポールのERP
(ロードプライシング)

 2004年にはITS-WCが名古屋で開催された。1994年の横浜以来であった。下の写真は展示の準備で東大の研究助手(女性)とDoctorクラスのメンバーと撮ったものである。左端は筆者。
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 第10話ではITS-WCやIV/ITSC等の国際会議や講演等の内容を回想する。